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The Savage Parade
よく晴れた土曜日、横腹にピーターパンの絵が描かれた長距離バスに乗って、もうすぐこの世からいなくなってしまう人に会いに行った。昔、とてもお世話になった。アジアの小さな国から来たアタシを娘のように可愛がってくれた。

アタシが行くと、彼はベッドに半身を起こして待っていて、アタシの顔を両手で挟んでぐりぐりするいつもの挨拶をしてくれた。でもその手はひ弱くかすかに震えていて、自分の手を重ねて握ると指が小枝みたいにパキパキと折れてしまいそうだった。

30分ほどの間に、いろんな話をした。彼の好奇心は昔のままで、へたな英語でアタシがしゃべるたいしておもしろくもない話にもいちいち目を輝かせて驚いたり笑ったりした。今もこんなにしなやかな彼の心が、衰えていく体に引きずられてどこか知らないところへ行ってしまうのかと思うとひどく理不尽な気がした。

酸素チューブをつけ喘ぎながら、彼は若い日に読んだというランボオの詩の話をしてくれた。世の中の雑多な俗人を高みの窓から俯瞰するという形式で描いたパレードという詩、その最後、"I alone have the key to this savage parade"という一行に体が震えた、と彼は言った。その言葉を噛み締めながら、ああこの話を聞けてアタシはなんてラッキーだなどとまたも身勝手に自分のことを考えた。

午後の日差しが注ぐ部屋の中に、酸素を送る機械の、シュー、コトンという音が繰り返し繰り返し響いていた。


IMG_7661_convert_20111114062751.jpg






( 2011.11.07 ) ( stories ) ( COMMENT:2 ) ( TRACKBACK:0 )
コメント

No title

人と人との出会いというのは本当に奇跡ですね。この広い世界で、ものすごい低い確率の中で出会う。異郷の地でそんな暖かな出会いがあった話を聞いて心がほっこりしました。別れの時が近づいてきてはいるもののももふくさんにとってはものすごい財産を残してくれましたね。

( by : もうこ * URL ) ( 11/09 - 10:53 ) ( 編集 )

Re: No title

うん、ありがとう!
それにしても、自分の周りには常に「死の気配」があるような気がする。そんな気配に囲まれているのに、なぜかアタシだけ死神さんに避けられている。アタシはきっと最後までひとり生き残る寂しい婆さまになると思う。(こわっ)

( by : タロコ * URL ) ( 11/09 - 22:12 ) ( 編集 )

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