乗り物にまつわる話、いくつか。
冷え込みの厳しい真夜中、
通りに立つ男性、タクシーを探しているがなかなかつかまらない。
止まりかけても、まず行き先を聞き橋むこうとわかるとさっと走り去ってしまう。
何台もそうして拒否されたあと、ようやく黙って止まった車に乗り込み、人心地ついた。
しかし行き先を言ったとたん、東ヨーロッパ系の運転手、なまりの強い英語で
"No, no Brooklyn"
いったん乗せといて寒空にまた放り出すってのか、と彼はずいぶんねばったが、
タクシーは頑として動かない。
あまりにくやしいので、降りがけに
"You are an XXXXXXX, You XXXXXX XXXXXX!!!"
と吐き捨てた。するとその運転手、
本当に申し訳なさそうに大きな体を縮めて
"Yes, I am" 
と言ったそうな。


NY市、帰宅ラッシュ時の地下鉄
発車の鐘が鳴って、車掌の女性が
「ドアしまります」
とアナウンスするたびに、人が次から次へと飛びこんできたり、
閉まりかけたドアを押さえたりこじあけたりして、なかなかうまく行かない。
何度もドアを開けたり閉めたりしているうちにだんだん頭に来て、
「ちょっと、その真ん中の車両で電車止めてる人!」
と叫んだ。
「あんたよ! その足どけなさいよ、ドア閉めるんだから!」
その声は全車両に響き渡り、2秒後、電車は無事発車、
乗客はこの女性に拍手を送った。


マンハッタンからハドソン川をはさんだ対岸、ニュージャージーで。
ある日本人がバスに乗っている。彼女は高校の交換留学でこちらに来たばかり。
ニュージャージーのホームステイ先からマンハッタンに初めてひとりで出かけて、街を見て回り、夕方のバスに乗った。乗ったはいいが、ステイ先のお母さんに教わった道路の名前や停留所の目印が行けども行けども出てこない。やがて乗客は彼女ひとりとなってしまった。
外はすでに真っ暗。
「もうここが終点だよ」
と運転手は言ったが、彼女は泣きべそをかくばかり。
運転手は、目玉をぐるぐるまわし深いため息をひとつついたあと、
彼女からなんとか住所を聞き出し、
ステイ先の家までその大きなバスで彼女を送って行った。

(以上すべて実話です)




( 2011.03.21 ) ( on this side ) ( COMMENT:2 ) ( TRACKBACK:0 )
コメント

No title

最後の日本人高校生の話。
あったまるね。大きなバスで送っていく、そのやさしさおおらかさがアメリカっぽい。
アタシの想像では運転手さんは太った黒人の女性。
ああ、もう仕方ないねえ~ってブーブー言いながら送ってく。
日本なら会社の規則やらなにやらできっとそんなこと出来ないだろうなあ。

( by : もうこ * URL ) ( 03/22 - 11:36 ) ( 編集 )

Re: No title

これ、こっちでは携帯電話がまだまだ使われてなかったころの話です。
今だったら簡単にステイ先の人と連絡がとれて迎えに来てもらっていて、バスで送ってもらうなんて豪華な話にはなってなかったかも。

( by : タロコ * URL ) ( 03/23 - 20:13 ) ( 編集 )

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