あっちがわとこっちがわ
正しい名前は Gantry Plaza State Parkというらしい。
Grand Centralからたったひと駅のところにあるアタシの好きな公園。
カメラを川に向けて立つアタシの背中の後ろには高層アパートがいくつか建ち、この辺りは最近人口が急増しています。
マンハッタンからすぐのところなのに、ここで観光客らしき人の姿はほとんどみかけたことがない。子ども連れや釣りする人、サンダルつっかけてうしろ手でそぞろ歩く老夫婦とかが、傾いた日を照り返す川面をおだやかに眺めて夕方の短い時間をくつろいでいる、ほんとにいい公園です。
ここからは20分ほど歩いて家に帰ります。この公園から家までのあいだに目にする風景や、匂いや音や、心を横切るいろんなことをアタシはこよなく大切に思っています。
Grand Centralからたったひと駅のところにあるアタシの好きな公園。
カメラを川に向けて立つアタシの背中の後ろには高層アパートがいくつか建ち、この辺りは最近人口が急増しています。
マンハッタンからすぐのところなのに、ここで観光客らしき人の姿はほとんどみかけたことがない。子ども連れや釣りする人、サンダルつっかけてうしろ手でそぞろ歩く老夫婦とかが、傾いた日を照り返す川面をおだやかに眺めて夕方の短い時間をくつろいでいる、ほんとにいい公園です。
ここからは20分ほど歩いて家に帰ります。この公園から家までのあいだに目にする風景や、匂いや音や、心を横切るいろんなことをアタシはこよなく大切に思っています。
毎週土曜日になると、公園の一角にfarmers' marketのテントが並ぶ。
マーケットはいちおう一年中あるけれども、やっぱり夏は果物や野菜の種類が多く土の匂いも濃厚で、それぞれの色にも勢いがある。見ているだけで幸せメーターがちょっと上がる。今週はなすにきゅうりにトマト、ねぎ、とディルを買った。おっと、輝く産毛についつられて桃も。
牛乳は昔ながらのガラス瓶で売られていて、空瓶を返すとこちらも1ドル50返してもらえる。この国の普通のスーパーで売られている牛乳のまずさといったら、もうどうしようもない。どうやって牛の乳をこんなにまずくできるのかとあきれるけど、その過程を知るのはあまりに恐ろしいとも思う。ここの牛乳も日本のには比べようもないけど、それでもマシな味ではある。
ディルは今が花盛りのようで、どのテントでも束にして売っていた。これは、金魚鉢に入れる藻のような葉っぱだけを使うんだけど、花瓶に差して眺めれば、フリーズドライの線香花火。それに部屋中がいい香りでいっぱいになって、しかも一束たったの2ドル、でまた幸せメーター上昇。
マーケットはいちおう一年中あるけれども、やっぱり夏は果物や野菜の種類が多く土の匂いも濃厚で、それぞれの色にも勢いがある。見ているだけで幸せメーターがちょっと上がる。今週はなすにきゅうりにトマト、ねぎ、とディルを買った。おっと、輝く産毛についつられて桃も。
牛乳は昔ながらのガラス瓶で売られていて、空瓶を返すとこちらも1ドル50返してもらえる。この国の普通のスーパーで売られている牛乳のまずさといったら、もうどうしようもない。どうやって牛の乳をこんなにまずくできるのかとあきれるけど、その過程を知るのはあまりに恐ろしいとも思う。ここの牛乳も日本のには比べようもないけど、それでもマシな味ではある。
ディルは今が花盛りのようで、どのテントでも束にして売っていた。これは、金魚鉢に入れる藻のような葉っぱだけを使うんだけど、花瓶に差して眺めれば、フリーズドライの線香花火。それに部屋中がいい香りでいっぱいになって、しかも一束たったの2ドル、でまた幸せメーター上昇。
このあいだ、会社の近くにあるBookOffで、三好達治さんの「詩を読む人のために」という本を見つけた。本棚の前に立ったその瞬間に見つけた。岩波文庫の昔ながらのベージュ色の背表紙のやつで、ずらっと同じ色が並んでいるのに、なぜかその本にだけピントがあったみたいにタイトルがきっかりと浮き立って眼に飛び込んで来た。アタシはただそこへまっすぐに手を伸ばすだけでよかった。
表紙に、片足をベンチに上げて夢中で本を読む人が描かれた小さなルネサンスぽい絵がついているのも好もしく、本を開く前にもう買うことを決めていた。できれば家で、ゆっくり大切に読みたい種類の本だけど、待てずに電車の中でちょっとめくってみた。
そしたら、前書きでもう心を奪われた。詩というとても個人的なものを解説することへの戸惑いと詩に対する真摯な愛情を、さりげないけども選び抜かれたに違いない言葉で訥々と語る著者はやっぱりすごい詩人だと思った。
一気に読み終えるのが寂しくて、酒飲みがちびちびとやるようにぐずぐず半分くらいまで読んで休憩中だけど、この中で初めて中川一政という人の何とも美しい詩に出会った。タイトルは「三郎といふびつこの犬とぼく」、詩集『見なれざる人』から三好さんが引いていた。この詩集をなんとか手に入れようと思う。
今日のGrand Central
テネシー産の石を敷き詰めたコンコースフロア。このなんとも微妙な光のはねかえし具合、どうでしょう。
表紙に、片足をベンチに上げて夢中で本を読む人が描かれた小さなルネサンスぽい絵がついているのも好もしく、本を開く前にもう買うことを決めていた。できれば家で、ゆっくり大切に読みたい種類の本だけど、待てずに電車の中でちょっとめくってみた。
そしたら、前書きでもう心を奪われた。詩というとても個人的なものを解説することへの戸惑いと詩に対する真摯な愛情を、さりげないけども選び抜かれたに違いない言葉で訥々と語る著者はやっぱりすごい詩人だと思った。
一気に読み終えるのが寂しくて、酒飲みがちびちびとやるようにぐずぐず半分くらいまで読んで休憩中だけど、この中で初めて中川一政という人の何とも美しい詩に出会った。タイトルは「三郎といふびつこの犬とぼく」、詩集『見なれざる人』から三好さんが引いていた。この詩集をなんとか手に入れようと思う。
今日のGrand Central
テネシー産の石を敷き詰めたコンコースフロア。このなんとも微妙な光のはねかえし具合、どうでしょう。
「月の砂漠」
という歌が子供のころから好きでした
この題名だけで
明るい大きな月と
夜空の深さ
黒い砂丘の連なりが
目の奥に見え
静寂という秘密の音を聞きました
足うらに砂の柔らかく冷たい感触と
頬には青いかすかな風も
曲は、らくだといっしょに
コックリコックリ揺れながら進んで
詞は
言葉少なに
淡々と指差すだけなのに
砂漠に落ちた
ちょっとさびしい旅人の影と
点々と続くらくだの足跡さえも
はっきり見えた気がしました
という歌が子供のころから好きでした
この題名だけで
明るい大きな月と
夜空の深さ
黒い砂丘の連なりが
目の奥に見え
静寂という秘密の音を聞きました
足うらに砂の柔らかく冷たい感触と
頬には青いかすかな風も
曲は、らくだといっしょに
コックリコックリ揺れながら進んで
詞は
言葉少なに
淡々と指差すだけなのに
砂漠に落ちた
ちょっとさびしい旅人の影と
点々と続くらくだの足跡さえも
はっきり見えた気がしました